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大行沢

参加者:L亀岡(3),SL山村(3),種谷(2),福田(2)


天候:晴れ


0400 片平集合

0430 出発

0520 駐車場

0540 入渓

1155 カケス沢出合

1450 北石橋 / 登山道へ

1530 カケス沢出合

1720 駐車場 下山



昨年度は後半にかけて、様々な事が起こり、例年通りとはなかなかいかない年であった。2月以降の山行はほぼ全て中止。唯一いけた山行は2月の蔵王縦走のみであった。かくいう私もこの蔵王縦走には参加したのだが、このときにはすでに中国で感染が確認されていたという例の”アレ”が直後に猛威を振るうことになろうとはまだ誰もが予想していなかった。私は春休みの前半はインドネシアに行っていて、その頃はまだ世界の中でも日本の感染者の数は中国に次いで多く、マラッカ海峡を船で通って国境越えする時などは、

「コロナ、コロナ」と囃し立てられ、別室に連れて行かれてわけのわからない書類を何枚も書かされたりした。当時は現地の人も冗談半分で囃し立てていただけだったろうから、これから先何年も外国人が観光で入ってこなくなるという状況は予想もしていなかっただろう。後半は新潟県のスキー場で1ヶ月生活していたのだが、3月に入るとスキー場の社員食堂で流れる朝のニュースは連日コロナウイルスのニュースばかり。風の噂では大学での授業もオンラインという新しい形を取るというし、正直ずっとこのままスキー場にいたい気分だった。しかし異常な暖冬であった昨年の雪は、それを許してはくれなかった。

そして長かった春休みも終わりを迎え、新学期が訪れた。「withコロナ」「三密」などの言葉とともに新しい生活様式が始まり、皆がコロナ時代の常識に戸惑い始める。この部活も例外ではない。絶対に集団感染をしてはならないという共通認識と、活動をしたいというジレンマに挟まれ、部員全員がもがいていた。オンライン部会などでいつ再開できるかもわからない活動計画についての話し合いを地道に続けていくもなかなか実態が見えず、改めて組織で山に登るということについて考えさせられた。やはり硬い話だけではなく、部会後に部員同士で集まってご飯を食べながらたわいもない話をするのが楽しかったりもする。私が合宿が好きな理由もそれである。これは完全に人による話ではあるが、山はあくまで機会提供の場だったりする。

 そんな中、夏休み直前の土日、ようやく山行実施の許可がおりた。それがこの大行沢である。私は気づかぬうちに計画に組み込まれていたが、クライミングが好きな私は当然沢も嫌いではなく、この計画に参加することにした。昨年の蔵王以来ということもあってか、メンバーもノリノリなのであった(?)

 半年間、全く山に行っていないためいつも以上に慎重に段取りが組まれたが、それでもメンバーTは「装備チェックってなんだっけ?」という始末。かくいう私は地図のプリントの仕方も完全に忘却の彼方に行ってしまっていた。しかし、いつものようにルーティーンをこなしていくとだんだん思い出していって、意外とすんなりと準備も終わった。

 当日の朝、久しぶりの3:30起床は体にこたえた。もう歳だ。行きの運転は確かあゆさんだったと思うが、気分が上がっていたのだろうか、運転もなかなかにファンキーであった。(嘘)

さてと準備も終え、アプローチーっと、、あれ、ここが入渓点?そうこの沢は駐車場からのアプローチが1分くらいの超お手頃の沢なのである。入渓してしばらくは天国のなめと呼ばれる最高の散歩。所々淵が出てきて泳ぐのだが、最後尾を歩くリーダーは大変なカナ×チなため、お助けひもを出しつつ突破する。本人は”おそらく“必死なのだが、上にいる三人にはその様子がコミカルに見え、ずっと笑っていた。

写真1,浜に打ち上げられる魚

写真2;綺麗な滝と画質鬼iPhone11


そこから先もどこを切り取っても絵になる沢の風景と滝ばかりで、GoProを持っていっていた僕はひたすらシャッターを切りまくった。これを“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる“という。特に振子滝は爽快そのものであった。

そして小さな滝も連続して現れるなか、自粛中にクライミングばかりしていたメンバーは壁を見ると反射的に登ってしまう。そんなわけでほとんどの滝を僕と種谷でリードした。比較するのもよくないかもしれないが、フリーのルートと比べるとガバしかなく終始笑顔であった。しかし、足置きなど100%ミスができない緊張感はやはりアルパインに通ずるものがあると感じた。そうこうしているうちに6時間ほど経過していて、リミットすれすれでカケス沢に合流する。我々はまだ知る由もなかったが、この沢はここから本領を発揮することになる。

カケス沢に入るとすぐに川幅が狭くなり、急な小滝が連続する。ボルダーグレードで言うと5-6級くらいかなと言う感じで、普段ジムに通っていれば難しいと感じるところはないのだが、あまり通い慣れていないメンバーは少し苦労しながら時間をかけて通過していた。これがもしみんなジムに行ったことがないメンツだったら多分引き返していただろう。


  そして大滝が連続するエリアに入る。見ると直登できなくもなさそうだが、今まで通過してきた滝の様子を見る限り、全員が安全に上り切れるかと言われれば微妙だったので、リーダーの判断で高巻く事にした。しかし、この高巻きが予想以上に悪く、トラバースの最中、種谷が二段滝の真ん中の滝壺に滑落してしまった。私は3番手を歩いていて、2番手を歩いていた種谷が不意に視界から消えて滝壺に吸い込まれていったのを残像のように記憶している。私はあまりの突然の出来事に声を出すことも叶わなかったが、私の後ろにつけていた亀岡さんはとっさに悲鳴を上げていて、生物として強いと思いました。

幸運な事に、種谷は一切怪我なく、ロープの確保で滝壺から脱出できた。しかし、私の知人でもこの山行の1週間前に沢の事故を起こしてしまった人がいて、個人的には非常に精神的にくる出来事だった。沢は1つのミスが本当に生死を分けてしまう場所なのだ。そのことを私は心に深く刻んだ。普段はポジティブな性格をしている当の本人も少し参ってしまった様子だったが、周りのメンバーがきちんとケアできていて、アフターサポートは素晴らしかったと思う。

その先でも懸垂を一回使うなど、慎重を期した沢登りを続けようやく北石橋に到着した。北石橋は予想以上にデカく、神秘的な場所だった。ここでようやくみんなの表情が和らぎ、笑顔が戻ってきた。いろんな困難を乗り越えての絶景、楽しかった!



写真3:北石橋でガッツポーズする四人


下山は悪路すぎて4ヶ月経った今は何も記憶に残っていないが、多分みんな疲労と安心感でいっぱいだったんだと思う。お疲れ様、と当時の僕に言いたい。駐車場に着くと入山から12時間経っていて、この山行の充実さを外側からも証明してくれたように感じて少し嬉しくなった。

(これを書いている12月下旬、トレーニング中に指をぱきってしまい、1ヶ月間のクライミング・山の強制レストをさせられるハメになった。ご迷惑をおかけして申し訳ございません)(右手がまともに使えないのでこれを記すにもだいぶ時間がかかりました)

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