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黒伏山南壁中央ルンゼ(1p目敗退)

参加者:CL 星川(3)、SL 松坂(3)、木下(2)

8/4

天候:晴れ

0330 入山

0505 取り付き

0530 登攀開始

0630 1P 目、撤退決定

0750 懸垂下降終了

0845 下山

夏休みに行く予定の前穂高岳の予備山行として黒伏山南壁中央ルンゼに登りに行った。クライミングには適していないであろう酷暑の中登る計画だったが難易度の高いルートに登れることを楽しみにしていた。

取り付き地点に到着すると巨大な壁が立っていた。暑くなる前に早く行こうと早速登り始めるが…、全然登れずに即テンションをかけてしまった。まだ1ピッチ目なのに情けないと思いながら少し休憩してもう一度登り始める。1ピッチ目はクラック沿いに登るのだがそのクラックが思っていたよりも悪く苦戦を強いられ再びテンションをかけてしまう。このときロープに振られてしまい正規ルートよりもだいぶ右側に行ってしまった。そのまま右側でも登れそうだったので登攀続行、ルートは相変わらず難しくブッシュ混じりでつかめるものはすべてつかんで登った。ようやく1ピッチ目終了間近にきて少しだけ安堵し、ピナクルのようなものに手をかけ体重を乗せた途端、自身の体の半分以上はあろうかという巨大な岩が壁から剥離した。僕の体は落下と同時にロープに引っ張られかろうじて落石の走路から逸れ、かすり傷で済んだ。落石を起こした瞬間、身体はロープに引っ張られ一瞬平衡感覚を失いかけたが、巨岩が落下していく映像は今でもよく覚えている。危なかった。とんでもないことをしてしまった。死ぬ寸前だった。もしロープに振られていなければ岩に押しつぶされていただろう。

 とりあえず1ピッチ目の終了点までいき落ち着くと、緊張が解けて、そして急激に体調が悪くなってしまい、撤退決定。懸垂下降をして取り付きまで戻った。

 ジムなどでスポーツとしてクライミングはやっていたが、アルパインのクライミングは今年度が初めてであり、この山行を通してアルパインクライミングというのがどういうものなのかを思い知った気がする。ジムや整備された岩場とは違う、自然の山に潜む危険を痛感した。今まで落石といっても大きいものでサッカーボール程度であり、今回のような巨大な岩が落ちるというような想像はしたことがなかった。しかしそれは現に起こり、「想定外でした」では済まない事態になりかねなかった。

 山登りにおいて“危険予知“というのは非常に重要だが、やはり経験したことがないものを想像するというのは難しい。滑落したらどうなるか。雪崩が起きたらどうなるか。考え出したらきりがないだろう。しかし、可能な限り想像力を膨らまして少しでも考えておくことで実際の対応というのは大きく変わるのであろう。多くの危険が潜む自然の中で自身の命だけでなく仲間の命も守る必要があるというのは登山初心者の僕らには少々荷が重すぎるとも思える。だが、それでも登る価値があるのだろう。様々な局面に臨機応変に対応し、ときには引き返すことになっても頂を目指すのが登山の醍醐味なのであろう。今回の山行は僕にとって貴重な経験であり、そして、山にどう向き合っていくのか、考え直すいい契機となった。

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