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桃洞沢-赤水沢周遊(2018/10/21)

参加者:CL荻野(2)、SL松坂(2)、杉森(2)、亀岡(1)

10/21

天候:快晴

0555 鳥獣保護センター入山

0630 桃洞・赤水分岐

0700 桃洞滝、入渓

0930 コル

1220 兎滝

1320 玉川分岐

1420 桃洞・赤水分岐、遡行終了

1500 下山

 十三夜をご存じであろうか?旧暦9月13日のことで、中秋の名月と呼ばれる十五夜(旧暦8月15日)の次に月が美しい日とされている。2018年の十三夜は10月21日であった。

 鹿角八幡平ICについた頃にはすでに宵の口で、ヘアピンカーブが連続する山道を抜けた頃にはすっかり夜も更けていた。入山口の森吉山野生鳥獣保護センターの駐車場に車を止め、傍らにテントを張った。雲一つない澄んだ秋の夜であったが、十三夜前日の煌々とした月明かりのおかげで、満天であろう星空はやや霞んでしまっていた。

 はたして雲一つない秋の夜も考えものである。遮るもののない空は地上から熱を奪った。放射冷却である。起き掛けに後ろ髪を引かれながら寝袋をしまい、テントから這い出すと唖然とした。車に霜が降りていたのだ。凍てついていたと表現するのが適切であろうか。我々はこれから沢登りに行こうとしているのである。到底この先入水できるとは思えない、そんな朝であった。丹沢では11月末にも沢登りをするし、この沢に同様の時期に遡行している記録も多いと強弁してここまできてしまったことに悔悟の念を抱いたのはここだけの話である。

 それでも日が昇れば、再び快晴は味方となる。ともすれば日焼けしそうなほど暖かな日差しに後押しされ、我々は入渓の意思を固めた。沢までの道すがらブナの倒木や切り株に目をこらしたが期待したナメコはまったくなかった。そのわけは数時間後の下山時にわかることになる。この朝駐車場にいたのは、沢登りの我々4人の他は、三脚とカメラを持った二人組が二組いただけであった。

 桃洞滝までは色づきはじめのブナ林を木漏れ日の下歩く。桃洞滝は一枚岩のナメ滝で、各種ガイド本で紹介されるのも納得できる美しい滝であった。桃洞滝を含め遡行中に現れる滝は一枚岩のナメ滝であるため、一見手がかりはなく通過は困難に思える。しかし、一部で“マタギステップ”と呼ばれる岩に刻まれたステップのおかげで特段の苦労なく通過可能である。その後はくるぶし程度の水量で、一部落ち葉が堆積して通過に苦労した淵はあったものの、概ね順調にコルに到着し桃洞沢の遡行は終了した。

山水画のような桃洞滝

 コルを乗越すと赤水沢に出る。赤水沢も桃洞沢と同様にナメが中心の、というよりもナメ床しかない沢であり、大変歩きやすい。通常は、沢靴のフェルトのフリクションがよく効くに違いないが、この時期は話が別である。落ち葉が堆積しているのだ。桃洞沢の登りではさほど気にならなかったが、赤水沢に入り下り勾配になるととたんに歩きづらい。計画では4回程度の懸垂下降で済む予定であったが、結局7回もせざるを得なかった。それでも、4名それぞれが役割分担をしてテキパキと行動できたことで、全体としては計画通りの時間に下山することができた。途中、沢から上がり登山道に復帰するに際し、その道を見逃して沢を下りすぎたことがあったが、行き過ぎに気がついた後、無理して藪を漕いで復帰するのではなく確実に場所がわかる場所まで戻って復帰するなど、前回の八甲田井戸沢遡行時の反省をしっかり活かすことができた。

 沢を後にし、登山口付近に戻ると驚きの光景が広がっていた。数十人もの人々がいるのである。多くは三脚とカメラを持って、そこここでシャッターを切っていた。クマゲラの森としても名高い森吉山麓は、最終民家から1時間以上山道を走らなければならない秘境であるが、バスツアーが組まれるほど人気の場所だったのである。道理でナメコが一切なかった訳である。

 本山行は9月末に実行することを予定していた。諸事情で一ヶ月ほど遅くなってしまったが、晩秋の沢登りは結果として良い経験となり、新たな知見を得ることもできた。まず、もちろん天候次第ではあるものの、膝下程度の水量の沢であれば十分遡行可能であるが、一方で晩秋は落ち葉が多く、夏期とは異なる困難さが伴うことがわかった。そして何より紅葉が美しい。澄んだ青空に紅葉と針葉樹の緑がよく映えて、コントラストに目を奪われる。日が当たる前の滝と紅葉は山水画のようにも思える。シビアな登攀や釣りや焚き火はなくとも、種々の評価に悖らない十分楽しめる沢でであった。(荻野記)

晩秋の沢の醍醐味。美しいコントラスト

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