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劔岳定着合宿(2018/08/09~16)

劔岳定着合宿

参加者:CL 網野(3)、SL 安(4)、荻野(2)、小林(2)、杉森(2)、星川(2)、松坂(2)、室田(2)、青柳(1)、亀岡(1

)、須田(1)、山本(1)、一色(1)、中村(1)、木下(1)、鈴木(OB)

8/9

天候:晴れ

06:30 富山駅発

0900 室堂ターミナル

1000 室堂ターミナル 入山

1045 雷鳥平

1250 別山乗越

1315 剱沢キャンプ場 着

1345 剱沢キャンプ場 発

1520 真砂沢キャンプ場 幕営

今年もまた入山日の担当となってしまった。まあそれはいいが、予定通り室堂に入山したことは間違いない。今年は僕が先頭を務めさせていただいたわけだが、まあ可もなく不可もなく歩けていたはずである。ここでやってきたのが、雷鳥平~別山乗越まで登りだ。標高差500m、1年生はだいたいここで序盤に苦しめられる。雷鳥平で2隊に分け、かなりゆっくりなペースで進んだ。1年生は問題なく通過していたが、普段よくしゃべる彼はいつになく寡黙だった。まあそれ以降は饒舌だったのだが。

剱沢小屋で情報収集を行う。それによると、長次郎谷左俣は通行不可、右俣、平蔵谷は通行困難とのことだった。去年は長次郎谷は通行はできたが、今年は長次郎谷隊を出すことは無理なようだ。

それからは問題なく進んだ。1年生はアイゼンの装着にややてこずっていたようだが、真砂沢キャンプ場に到着するといつものところに来たという安心感がこみ上げる。(松坂記)

 

8/10

天候:曇り

0300 起床

0425 BC 発

0625 熊の岩 着 訓練開始(歩行訓練・支点工作・ロープワーク)

1045 訓練終了 熊の岩 発

1120 長次郎谷出会い 訓練開始(歩行訓練・滑落停止)

1230 長次郎谷出会い 発

1310 BC 着

今日は雪上訓練の日。毎度のようにアイゼンを着用し、熊の岩へと進む。順調なペースで登り、訓練を行った。歩行訓練は少し怖かったが、やりがいはあった。1年生も恐怖に怯えながらもやりきったはずであろう。その後、支点工作を行った。支点工作はVO2maxを鍛えるためのいいトレーニングになるかもしれない。特に横埋め。1年生も苦労してやっていたが、苦労するあまり正確性に欠ける場面もあった。ロープワークも特に問題はなかった。それにしても剱岳はスケールの大きさに圧倒されやすい。熊の岩からでも様々なface群が見え、圧倒された。来年は絶対登ってやると誓った。昨年は長次郎谷に何度も登ったが、今回はこれっきりだった。(松坂記)

雪訓中のみなさん

 

8/11

・源次郎尾根

参加者:CL鈴木(OB)、SL網野(3)、荻野(2)、松坂(2)、室田(2)

天候:小雨のち晴れ

0400 BC発

0450 取り付き

0825 Ⅰ峰

0900 Ⅱ峰

1050 劔岳

1200 平蔵のコル

1345 BC着

室堂から直接劔岳方面に向かう登山者は、雷鳥坂の急登を登り切り別山乗越にたどり着くと突然、黒々とした岩の塊を目にする。ある人はそれを要塞とも表現する。一見、取り付く島もないほどに人間を拒むかのように見えるその山容に、ある人は岩にへばりつき、またある人はひたすらに雪の斜面を歩いて挑むのである。中でも源次郎尾根ルートは、劔沢雪渓から山頂まで一直線に伸びる尾根を辿るコースで、別山乗越から見るその全容は“美しい”の一言に尽きる。

 夜半テントにたたきつけていた雨は、午前1時半ごろには止んだものの、出発時間のベースキャンプには霧が立ち込めていた。霧の晴れ間から見える星空に希望を託して、予定通り出発し取り付きに向かった。取り付きでは、雨こそ降っていなかったもののどんよりとした雲が垂れ込めていた。Ⅰ峰までにはⅢ~Ⅳ級程度の岩場が2ヶ所あるが、2ヶ所目こそロープで確保して登ったものの、順調に通過した。Ⅰ峰手前から小雨が降り出し、何度か進退を逡巡した。ただ、山専門の天気予報「ヤマテン」の情報で天気は回復傾向であったことや、もはや難易度の高い岩登りはないこと、風は弱く気温も低くないことなどを総合的に勘案して、山頂を目指す方針をとった。筆者は昨年も源次郎尾根に取り付いたが、同様にⅠ峰手前から雨に降られ、10回近く懸垂下降を繰り返して取り付きに戻った苦い経験をしたが、その時よりは雨も弱く、気温も高かったため、むしろ快適であった。岩場を越えたのちⅠ峰までは忠実に尾根通しで行くのが最も容易とされる。Ⅰ峰をクライムダウンしたのち、Ⅱ峰をハイマツの切れ間沿いに登るとⅡ峰である。Ⅱ峰の下りは30mほどの垂壁を懸垂下降する。いかなる場所であろうと、何mであろうと、懸垂下降は懸垂下降であり、基本に忠実にやれば何も問題ないことは頭ではわかっていても、いざその場に立って下を見下ろすと足がすくむ。いつも以上に慎重に、下降器をセットしバックアップをとったが、慎重になるあまりバックアップのフリクションが効きすぎ下りづらかったのは反省点である。このころにはいつしか雨もやみ、晴れ間がのぞいていた。問題なく懸垂下降を終えれば、あとは山頂までガレ場の登りを1時間である。山頂では展望こそなかったものの、いつもより静かな山頂で登頂の歓びを味わった。下山には、平蔵谷を使った。途中雪渓が途切れ、ガレ場を歩かざるを得ない場面もあったが、安全に通過し計画よりも少し巻いて下山した。(荻野記)

アプザイレンのコルからⅡ峰を望む

 

・別山尾根ルート

参加者:CL安(4)、SL杉森(2)、青柳(1)、中村(1)

天候:晴れ後雨

0400 BC 発

0630 剣山荘 着

0800 剣山荘 撤退決定

1030 BC 着

 3時起床。入部して約4ヶ月、この時間に起きることにも狭いテントで眠ることにも慣れてきた。

 朝食の準備に取り掛かる。メニューはきつねうどん。コッヘルにこびりついていた昨日の晩飯のかやくご飯(考案者 中村まきと)がうどんに混ざっており、「まきとを感じる」とか言って今日も朝から須田がうるさい。だが入部して約4ヶ月、こんな須田にも慣れてきた。

 0350荷物チェック。安さんがルートの概要を説明する。今回のルートは別山尾根経由で剣岳へ。このルートは一般ルートでは最難関と言われているものの、ポケモンに例えるとリザードンレベル46といったところか、今までの山行経験からすれば難なくこなせるだろう。しかし天候が懸念された。午後にかけて崩れるとのことだ。天候によっては途中で引き返すことを余儀無くされることもある。ただ現在はまだ雨が降っていないため、決行することに。

 4時、真砂沢を出発。

 外はまだ暗い。ヘッドランプをつけ夏道を行く。40分ほど歩くと剣沢雪渓に出た。ここでアイゼンを装着し再び出発。

外が明るくなって来て段々と景色が見えるようになって来た。見上げると、剱山頂は雲に覆われているものの、ところどころ晴れ間も見える。登頂に向けて期待が高まる。さらに剣沢を詰めていき、平蔵の出会いに到着。ここで10分休憩。

A隊が源次郎尾根に登り始めるのを見届け、我々も出発。だがここで雲行きが怪しくなってくる。

「どうか天気が良くなりますように、アーメン」

と、心の中で祈りをささげたその刹那

「神は死んだ」

と、すかさず脳内プレイング先生から飛んでくる戒めの言葉。あ、はい、失礼しました。ここで思わず苦笑い。

(中村まきと、通称プレイング先生はニーチェを崇拝しており、キリスト教的な言葉を聴くとどうしても神は死んだと言いたくなるらしい)

山岳部はユニークな人が多いなーなんて思いながらさらに雪渓を詰めて行き夏道へ出た。だが、ここで雨が降り出す。剣山荘まで行き、タイムリミットギリギリまで待って進退を決めることにした。土砂降りの中、剣山荘を目指して歩く。ここでA隊からⅠ峰を越えた報告が入る。どうやら源次郎尾根は雨が降っていないようである。

剣山荘に到着。中で少し雨宿りをさせてもらうことにした。シャワーも付いているというこの山小屋は「いや、ホテルかよ!」と突っ込みたくなるほど立派であった。

談話室において、安さんと「山をやっている女はなぜ可愛く見えるのか」を議論しながら雨が止むのを待ったが、なかなか止まない(ちなみに、なぜ可愛く見えるのかの結論は忘れてしまった。この山行記を書いたのは10月23日である)。

結局、剣山荘出発のタイムリミットになっても雨は止まず、撤退することが決定した。来た道を引き返す。写真は剣沢小屋で撮ったもの。

撤退が決まり落ち込んでいる青柳(右)とプレイング(左)

しかし、真砂沢に近づくにつれ天気はよくなって行き、雨も止んだ。そしてベースキャンプに着いた時の天気は晴れであった…。源次郎尾根隊(A隊)はどうやら登頂できたようである。

山の天気は気まぐれである。おなじ山でも時間と場所によって天気は全然違う。でもすべてがうまくいくなんてつまらねぇーだろぉ?だから君に言いたい。

山登りは何があるかわからない。だから面白い!

予備日を使って次こそは剣山頂へ!

To be continued ...(青柳記)

 

8/12

・平蔵谷から剱岳ピストン

参加者:CL安(4)、SL松坂(2)、室田(2)、木下(1)、須田(1)

天候:曇り時々晴れ

0400 BC発

0730 平蔵のコル

0840 剣岳山頂

1025 平蔵のコル

1230 BC着

この日の朝食はトマトリゾット。しかし、トマトとは名ばかりで、米に対してトマトスープの粉が全く足りておらず、鍋の下部1/3程には完全に白米だけの層が出来ていた。味のしないおかゆを無心で口に運ぶ作業が続き、早くも僕のやる気は平蔵谷を真っ逆さま。行動食に入っていたカルパスが唯一の心の支えだった。

BCを出発してしばらくすると、周囲は明るくなってきた。平蔵を登り始めてふと振り返ってみると、剣沢に日が差しているのが見え、これは快晴の山頂もあり得るかもしれない、と朝食のことなどすっかり忘れてしまっていた。まあアタック日の朝食などそんなものだ。

平蔵の上部まで登ってみると、期待を打ち砕くかのようなガス。加えて、平蔵のコルの方からは登山者らの話し声も聞こえ、嫌な予感がした。案の定、縦這いの手前には長い列ができており、

「これに並ぶのか…」

とやや憂鬱であったが、心あるおばちゃんが前に入れてくれた。縦這いを登る直前に、CLの安さんから、

「須田はこういう注目度の高い所だとランジとかしそう。」

と言われ、一瞬本当にやってやろうかと思ったが、実際登り始めてみると、思ったよりも怖く、とてもそんなことをする余裕は無かった。

無事山頂で自撮りを終え、さあ帰ろう、という矢先に今度は横這いの渋滞。結局、一時間近くの待ち。カニのポーズで写真を撮ったりして暇を潰した。そんなこんなで、横這いに突入。鎖を使わずに通過しようと意気込んでいたが、岩が濡れており、風もそれなりで、思わずA0。

その後も気の抜けない岩稜帯が続いた。再びコルに戻りほっと一息…も束の間、僕らはピッケルを取り出し、アイゼンを履いて、そそくさとガスの平蔵谷へと消えていった。(須田記)

カニのポーズの松坂(左)と須田(右)

 

・仙人池

参加者:CL小林(2)、SL杉森(2)、星川(2)、一色(1)、亀岡(1)、山本(1)

天候:曇り

0400BC発

0515二俣

0630仙人池着

0800仙人池発

0945二俣

1045BC着

SLの杉森以外は全員前日がテントキーパーだったこともあり、皆調子良く出発した。

しかし10分ほど暗い中ちょっとしたガレ場を下ると、ルート研究では存在しないはずの雪渓が姿を現した。想定外の事態でピッケルやアイゼンも持っておらず、雪も堅い。しかも辺りは暗く、雪渓の先も見えない。そのため、杉森と1年生を待機させ、小林と星川で偵察することにした。結果雪渓を横切ると夏道があることが分かり、比較的傾斜の緩いルートを選んでキックステップで進んだ。その後は川辺の道を順調に進み、二俣を過ぎ山道を進んでいった。ペースが速いことと、朝のトマトリゾットが苦しく、登りで気持ち悪くなるものもいた。結果1時間半巻きで仙人池に着いてしまったが、あいにくのガスにより逆さ剱は見えないため、8時まで待ってみたがガスが晴れることはなかった。仕方なく仙人池を後にすると30分ほど下ったところで、登ってくる人が、蜂に刺されたので気を付けるようにと助言をしてくださった。登りでは一匹もいなかったため半信半疑であったが、近づかずに素早く通り抜ければ大丈夫だろうと考えていた。しかし実際に進んでみると、登山道の脇から集団で現れ、星川が服の上から腕と足に3か所、亀岡が直接手に1か所刺されてしまった。急いでその場から離れ、毒を吸い出すなどを試みた。二人とも痛み以外の症状が見られないためとりあえずBCまで戻ることにした。途中、他の登山者の方に蜂に刺された時の対処法を教えてもらい、30分ほど安静にし、塗り薬、ポイズンリムーバーなどを貸して頂いた。幸いその後アナフィラキシーショックなどにもならず、無事BCに戻ることができた。

 今回は蜂に刺されるというハプニングがあり、詳しい対処法が分からず、他の登山者の方に大変お世話になりました。改めて感謝します。今回の経験を生かして蜂への対策を部員で共有したり、ポイズンリムーバーを新たに購入するなどの対応を取りました。

 仙人池のルートとしては、雪渓や河原、鎖と丸太の足場を使ったへつり、吊り橋などのバリエーションに富んだ道が特徴的で、大変楽しむことができました。今度はぜひとも逆さ剱を見てみたいですね。(星川記)

へつりの様子

 

8/13

・仙人池

参加者:CL 松坂(2)、SL 室田(2)、荻野(2)、中村(1)、須田(1)、木下(1)

天候:雨時々雷雨

0600BC(真砂沢)発

0705小休止(1600m)

0800小休止(1850m)

0900仙人池

0950同発

1100小休止(1600m)

1200BC帰着

 本来4:00発の予定だったが、前日の別パーティーの情報から、行動開始後直ぐに雪渓がある、登山道途中(2000m付近)に蜂の巣があることが分かっていた為、暗い中での行動を避ける、巣の撤去状況を確認するという理由で出発を遅らせた。6:10頃雪渓に着き、この為だけに用意したピッケルを突きながら各人無事に雪渓を渡った。6;30頃から雨が降り出し、合羽着用の為一時停止。濡れた鎖場をびくつきながら無事通過。10人超の大パーティーに2つも遭遇したのと、合宿後半で各人に疲労がたまっていた為遅くはなったが、9:00頃仙人池到着。曇っていて劔岳を見渡せず、晴れるのを待つうちに再び雨が降り出し、写真を撮り損ねた。9:50仙人池発。その直前荻野氏が無線交信を試みるが、3度の呼びかけに応答が無かった為断念。10:00に池の平小屋へ分岐する三俣の所で再び交信を試み、少々不調ながらも交信成功。尾根を下る途中から雷の音が聞こえ、ペースを速めた。小休止は行きと同じ河原でしたが、周囲にあまり高いものが無かった為、安全の為に休憩を5分程度で切り上げて直ぐ出発した。鎖場付近の水嵩は増していた。(中村記)

山の中腹で遭遇(ヘビ)

 

・八ツ峰上半

参加者:CL網野(3)、SL鈴木(OB)、小林(2)、星川(2)

天候:曇りのち雷雨

0400 BC発

0530 熊の岩 着

0700 熊の岩 発

0800 BC 着

 昨年の嫌な思い出が残るこのルート。そういえば昨年も上半の日の朝食はペンネで夕食はカレーであった。昨年の事故を僕はDフェースから見ていた。あのヘリで運ばれる様子などが頭に浮かんで来る。と思っていたが長次郎谷をつめていくと見えるのはガス。熊の岩から上は濃いガスに覆われていて何も見えない。おかげで?緊張などは解けた。しかし雨が降っているのでは取り付けない。仕方なく熊の岩の下部でツェルトを被って天気が回復するのを願う。時折ベンチレーションから顔を出すと付近を通る登山者たちの視線を感じる。熊の岩上部ならわかるが下部で朝早くからツェルトを被っている様は滑稽である。この日はこのまま天気が回復することなくリミットを迎えてしまい撤退した。(小林記)

ベンチレーションから外を覗き込む

 

8/14

・別山尾根ルート

参加者:CL網野(3),SL小林(2),星川(2),山本(1),亀岡(1)

0400 BC 発

0600 剣山荘

0900 山頂

1200 剣山荘

1330 BC 着

 剱岳は小さな頃から私の憧れの山だった。いつか登ろうと思ったまま中々機会に恵まれず、今回初めてその機会を得た。

合宿初日、劔御前小屋から見た剱岳のスケールと岩稜に圧倒されるとともに、ついにこの山に登れるのだととても嬉しく思った。一般道では日本で一番難しいと言われており、気の抜けない岩稜が長く続くので気を引き締めて登ろうと気合が入った。

 当日は朝から天気がよく、気持ちよく登り出すことができた。雪渓を詰め、夏道に乗る。剣山荘に着く頃には人も増えてきた。次第に鎖場が出てきて、渋滞も見られるようになってきた。平蔵の頭では、ガスが出て高度感は薄れたが、今回の行動では一番怖い鎖場だった。ここを超えると、先行パーティーがカニのタテバイで騒いでいる声がよく聞こえ、自分は落ち着いて登ろうと決意を固めた。 カニのタテバイを通過すると、ガスが晴れてきて意外とあっけなくピークに到達した。天気もよく、山頂は写真を撮る人や景色を楽しむ人で賑わっていた。しばらく自撮りをしたり記念撮影をしたりして楽しんだ。BCの真砂沢は電波が入らないので、山頂で各々ツイッターやインスタグラム等のSNSを確認し、山岳部のツイッターもツイートしていた。その後、カニのヨコバイやはしごを通過し、平蔵谷を横目に別山尾根を下った。憧れの剱岳に登れたのだという嬉しさから、その日の夕食の麻婆豆腐を作っている時も食べている時も終始気持ちが高揚していた。

 翌日、劔沢から見た剱岳はやはりかっこよくて、あの頂に立ったんだなと嬉しく思い満足感もあったが、私は少し物足りなさを感じてもいた。来年以降はバリエーションルートやアルパインクライミングに挑戦したいなと考え、剱岳が私を含め多くの人を魅了し、憧れの山であり続けていることを再確認した。(亀岡記)

山頂にて。天気が良く、テンションが上がった。

 

8/15

・八ツ峰上半

参加者:CL網野(3)、SL鈴木(OB)、小林(2)、星川(2)

天候:晴れのち雨

0400 真砂沢BC 発

0545 Ⅴ・Ⅵのコル

0635 Ⅵ峰

0745 Ⅷ峰

0845 八ツ峰の頭

0920 池ノ谷乗越

1010 熊の岩

1200 剱沢BC 着

 予備日を使用してのリベンジ。朝方テントから顔を出すと星が綺麗に輝いている。前日の天気予報も合わせてこれなら登ることができそうだ。今朝も朝食はペンネだ。モッチャモッチャと頑張って口に運ぶ。どう考えても朝からあの量のペンネを食べて行動するのは難しい。コッヘルに残ったペンネをTKの皆さんに託し出発した。

 Ⅴ・Ⅵのコルに着くと仙人池の方までくっきりと見える。今日なら逆さ劔も綺麗に見えたろうなと思いながら息を整えいざ上半に取り付く。僕らのパーティはみんな登攀経験があるので上りはロープを出さずに進む。比較的早めのペースでⅥ峰を登っていき、ピーク1からはクライムダウンをし、ピーク2からは懸垂で降りた。

 Ⅶ峰へは気持ちの良い稜線沿いを進む。Ⅶ峰からはクライムダウンしたが、多少濡れていたこともあり悪く懸垂でもよかったと感じる。Ⅷ峰までは結構ガレた道を進んだ。いよいよⅧ峰に着き因縁の懸垂下降である。網野が買い物袋にロープをまとめ慎重に降りていく。途中にギャップもありロープの流れに気をつかう。このような懸垂は初めてでゆっくり慎重に降りた。コルへの最後の下りはクライムダウンでもいいだろう。コルで一息ついていると雪渓上部に人影が見える。どうやら北方稜線に取り付くようだ。申し訳ないが軽めの落石を彼らにしてしまった。最終八ツ峰の頭への上りはまるでトレーニングだった。前日に須田とBCでやっていた片足スクワットを思い出す。足が絶妙に高いところにあり、太ももに響く。上りの後半はもう気持ちのいい筋トレだった。筋トレ?を終えると八ツ峰の頭に到着した。非常に気持ちのいいクライミングだった。後ろを振り向くと槍ヶ岳を含む北アルプスの山々を拝む事ができた。

 さあここで緊張を解いてはいけない。下りが危険なのだ。僕は下りが苦手でうまくリズムを作れない。頭からはクライムダウンし、ザレ場を下って雪渓に乗った。しかしこの雪渓も上部なのでいい感じに繋がっていなく、雪渓を降りてガレ場を進む。長次郎谷の中俣は下部まで繋がっているので中俣を目指した。ラークと大きい声が聞こえ、中俣から八ツ峰を振り返ると取り付いているパーティが見える。冷蔵庫大の落石をしていて少し不安に感じたが、我々はアイゼンを履き足早に長次郎谷を降った。本来ならここから真砂沢BCに降るところだが、明日の下山のことを考え劔沢にBUしていたのでここから多少の上りである。僕は慣れた雪渓だし大丈夫だろうとあまり行動食を取らなかったが、それが裏目に出て思いっきりバテてしまった。前に体を倒して進むのがやっとだ。実に情けない。最後の最後に思いっきり疲れてやっとの思いでBCに到着した。するとTKの皆様方が暖かくお出迎えしてくれ飲料をもらおうとした矢先、突然の豪雨でせっかく乾いていた体も濡れてしまった。なんだかんだで3時間ほどコースタイムを巻いていたようだ。このパーティの力量を考えると当たり前か。ありがたいことに「来年は連れて行ってください」と後輩が言っているので来年もまた成功させようと気合いが入る。次はⅥ峰フェースからの上半か上半から本峰を目指すのもありだと思う。(小林記)

気持ち良く登る

八ツ峰の頭にて

 

・別山尾根ルート

参加者:CL安(4)、SL杉森(2)、青柳(1)、中村(1)

天気 快晴のち雨

0530 真砂沢BC 発

0800 剱沢キャンプ場 ベースアップ完

0900 剱沢BC 発

1030 前剱

1200 カニのタテバイ通過後 雨により撤退

1520 BC 着

 ノスケ予報によると明日(下山日)は荒天が予想されるとのこと。よって最終日の負担を減らすために(雨風の中、長距離を歩くのはきついですよね)ベースキャンプを真砂沢から、より室堂に近い剣沢に移すことになった。そして3日目に悪天で撤退した我々が剣に行くかどうかは剣沢にベースキャンプを移した後、体力や天候をみて決めることに。

朝の時点での僕は

「7日目でめっちゃ疲労溜まってるし、ぶっちゃけもう剱岳とかどうでもいいし、もう山頂にも登りたくないし、早く下山したいんだけど、、、」

と思っていた。

 テントを撤収。1週間お世話になった真砂沢を後にし剣沢へ向かう。7日目ともなるとやはり疲労がかなり蓄積しているようだ。足取りは重い。そしてなんだか気だるい。

「あー、はやくかえりてえー。なんか暑いし、だるいんだが。でも、なんか今日めっちゃ天気ええな。もしかして、これは、最高の剣がみられるかもしれねぇ、、、」

真砂沢に近づくにつれ期待が膨らむ。そして足取りも軽くなってゆく。

0800剣沢に到着。

「ハルキ、いったい何が、、、、おい、、いったい何が見えるってんだよ!!??」

剣沢キャンプ場から見た剱岳(と須田型の巨人)

さっきまでのだるさが一瞬にして吹き飛ぶ。雲一つない快晴(実際は少しある)、そして、まさに剣のごとく鋭くそびえたつ剱岳。(写真でその鋭さはつたわらない)

「お前は2日目のせっくんも頑張っていたし、初日やベースアップの時も他の人の荷物を率先して持っていたのう。にも関わらず3日目の別山尾根では撤退。平蔵谷でも頂上がガスっていて絶景を見ることはかなわなかった。お前は報われないのう。かわいそうに。今日はそんなお前のために、わしが特別に過去最高の剱を用意してやったぞい。思う存分に堪能しなされ。」

山の神様がそう言ってる。頂上に立つ自分の姿を想像して鳥肌が立つ。疲労で体の節々が痛い。それでも行きたいと思った。激しく山頂に行きたいと思った。行くしかない。

時間的にもまだまだ余裕があり、我々の体力にも問題がなかったため、

0900剣山頂を目指して出発。

快晴の中いい気分で進んで行く。足取りは軽い。

一服剣から見た能登半島

途中、一服剣で能登半島の輪郭がくっきりと見えた。感動ものである。小さいころから地図帳で見ていたあの能登半島である。本当にあんな形をしているんだな、、、すげーや。

しかし、その感動は長くは続かないのが山の常である。だからこそ、その感動は計り知れないものになるのだが、、、

少し行くとさっきまでくっきりと見えていた能登半島に雲がかかり始めた。後は読者諸君のご想像通りである。

我々は雲に飲まれた。そしてカニのタテバイを超えたあたりから雨に打たれた。

またしても我々は撤退を余儀なくされたのだ。

結局、この合宿を通して僕は剣山頂からの絶景を拝めることができなかった。

しかし、途中見えた能登半島の景色は今も僕の心の中に残っている。そして、また山へ行ってあんな絶景を見たいという気持ちを起こさせ、日々のきついトレーニングの原動力になっている。来年も剣に来たいと思わせてくれた山行だった。ありがとう。(青柳記)

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