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岩手山合宿vol.2(2019/02/05-06)

メンバー:CL網野(3)、SL小林(2)、荻野(2)、松坂(2)、須田(1)、山本(1)

2/5 天候:快晴

0500片平集合出発

0800御神坂登山口 着

0830入山

0930切接

1045展望台 設営

1130雪訓開始

1400終了 幕営

2/6 天候:曇り

0430起床

0600出発

0845不動平避難小屋

0920撤退

0940不動平避難小屋

滑落停止訓練

1000訓練終了 出発

1120展望台 着

1200発

1300下山

1830片平着

 冬山をやる理由は人それぞれ違う。無雪期には無い困難さを乗り越えてピークに立ちたい者、ひたすらに続くラッセルをしたい者、冬の澄んだ空気の中一面銀世界の美しい景色を求める者…。様々な思いが交差したとき、人をして厳しい冬山に向かわせるのだろう。

 翻って私はスキーのために冬山をやっている。滑るために登り、暫時の快楽のために山に入る。どこに登るか、どこを登るかよりも、どこを下りるかすなわちどこを滑るかが最大の関心事である。本音を言えばスキーを持たずに冬山に入るのは本懐ではない。しかし、不本意なことでもやらねばならないときもあるし、如何に前向きにそれをこなすかが人生の豊かさや質を左右するのかもしれない。今回のような、スキーではない冬山が私にとってはまさにその時である。

 冬山は厳しい。雪、風、寒さ…あらゆる自然条件が立ち塞がる。しかしそれらは敵ではない。立ち向かって勝負し、勝とうとする相手ではないのだ。それらの条件を受け入れ、その中で如何に身を処すかという己との戦いがあるのみである。それまで身につけてきた経験、技術、そういったものを最大限に使って身を処す。これが登山スタイルでの冬山最大の楽しさであると私は思う。この楽しさは条件が厳しいほど増大する。より寒い中、より多くの雪に阻まれ、より強い風に吹かれる。どこまでその条件を受け入れ、適切に身を処せられるかが楽しさのバロメーターになる。それ故、スキーを持たない冬山では条件が厳しいほど楽しい。無論、山スキーでの楽しさのバロメーターは違う。より良い条件の下で、より上質の雪を滑ることが無上の喜びである。

 今回の岩手山は、昨年末に岩手山(山域の犬倉山)で行われた冬合宿が、クリスマス寒波の影響で縮小したことによる補充合宿であった。日程を二つに分け、コンパクトな隊で登頂と訓練を目指したものである。この山行記は後半組のものであり、2日前に行われた前半組は、風が強かったものの登頂していた。

 早朝の東北道をひた走り、はるばる岩手山麓に着いたのは朝8時。気温は低かったものの、麓の風は弱く、天気も上々で、上部に少し雲がある程度であった。厳冬の岩手山としてはこの上ない条件であろう。一昨年末に同じコースを辿った時に比べればえらい違いである。初日のうちに頂上にアタックしたいとの声もあった。そのくらいの柔軟さが合ってもいいと思うが、可能な限り忠実に計画を遂行することを重んじそれがraison d'êtreとなっている(と私は感じている)伝統ある大学山岳部ではそれは難しいのかもしれない。

 それはともかくとして、この日は、風で固くなった雪のおかげで順調に幕営地に達し、予定通り訓練をした。

 さて、2日目。アタック日である。夜半多少の降雪と風があったものの、条件は引き続き良いように思えた。森林限界を過ぎて、遠野の里を覆う雲海を楽しみながら岩稜に入り、アイゼン登高に切り替える。一昨年の撤退場所はここだねなどと記憶を辿りつつ、特に支障なく外輪山を超えてお鉢を目指す。徐々に風が強まるのを感じる。日射があるおかげで気温はそれ程低くはないし、一昨年撤退した時ほどの風ではなかったが、隊に暗雲が漂う。吹き上げる風に押してもらいながらお鉢に辿り着くと25m/s強の風が吹いていた。時計/反時計回りにそれぞれ300mほど進んでみるも、歩いている時間と耐風姿勢をとっている時間が同じくらいの有様で止むなく撤退した。その後は、計画通り滑落停止訓練をして、早々に下山した。

 而して、補充合宿後半組は、山頂を目前にして登頂は叶わなかったわけである。悔しかった者もいよう。しかし、私はむしろ有意義であったと思うし、楽しかった。すんなり登頂してしまうよりも、どの程度の風でどういう影響があるのかを学ぶ機会を得られたわけだし、何より、強風に飛ばされそうになりながら耐え歩くのは非常に楽しい。それに、山頂を目前にして帰るなんて、いかにも冬山らしくて良いではないか。天邪鬼との誹りは甘んじて受け入れよう。ただ、言いたい。これこそ冬山の醍醐味であると。これだから山はやめられない。(荻野記)

風も弱く歩きやすい稜線

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