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秋田駒ケ岳縦走(2018/02/08~10)

参加者:CL安(3)、SL千田(3)、大橋(3)、網野(2)、小林(1)、杉森(1)、松坂(1)、室田(1)

 蔵王縦走前にメンバーで連泊の山行をやる必要性を感じ、それ用の山を探し始めたのが12月。ところが良い場所がなかなか見つけられず、伸びに伸びて場所決定は1月中旬になってしまった。直前に決めた割には、アイゼンが試される岩々した場所(男岳周辺)とナビゲーションが試されるのっぺりした場所(湯森山とかそこら)があって、蔵王の予備山行にはちょうど良かった。というか、終わってみればラッセルあり、雪稜あり、ホワイトアウトナビゲーションありで、今季最も密度のこぉ~い山行だった。

 

1日目 

天候:雪

04:00 片平集合→08:00 田沢湖スキー場→08:30 入山→13:30 1350m地点、幕営

 今年は雪が多い。その上、今回は日本海側の山。ラッセル地獄に期待しながら田沢湖スキー場へ向かった。スキー場の駐車場に車を停め、田沢湖スポーツセンター脇から入山した。この時点で積雪は2m程度。これはかなり期待できそうだ。

出だしの水沢渡渉。冬の渡渉ってなんかエロいよね。

渡渉してしばらくは林道沿いに歩き、林道が東に逸れ出す箇所からは水沢沿いに直登した。登山道からはしばらく離れることになるが、雪が多いおかげで藪には苦労しなかった。初めこそ平坦でつまらないが、標高800mあたりから斜度が出て腰ラッセルになり、雪もフカフカなので一気にラッセル強度が上がる。同時に今シーズン初の腰ラッセルで、僕もテンションも上がった。やっぱりラッセルが一番楽しい。つらいけど。標高1000mあたりからは美しいブナ林が広がり、大汗を流しながらも気持ちよく歩くことができた。ただ予想以上の積雪量で全体の進度は遅れてしまっていた。技術的な核心になるであろう、稜線に出てから男岳までに要する時間は未知数だったため、ここは明日に回して、今日は標高1300mの尾根上で幕営となった。夜にかけて風が強くなる予報だったので、斜面を削ってテントを立てた。(安記)

 

2日目

天候:雪 視界:50m以下

04:00 起床→06:20 出発→06:40 1390m分岐→07:40 五百羅漢→09:30 男岳→11:00 男女岳→12:20 横岳→14:20 湯森山→14:35 1400m地点、幕営

 雪は比較的締まっていたがワカンを付けて出発した。ハイマツの上に積もった雪の上を歩くような状態だったため時折ズボッと沈み苦戦した。出発から20分ほどで稜線上である1390m分岐に出て、ここでアイゼンに履き替えた。視界は極めて悪く20mあるかどうかという程度。トップを歩いていた自分は想像以上の視界の無さに緊張しつつも高揚感を感じていた。1390m分岐から五百羅漢の稜線はやや西側斜面寄り、ないし稜線上を歩いたが、左手は転んだらどこまでも止まらないような斜面が続いており神経をとがらせた。五百羅漢は存在感のある岩が目の前に立ちはだかっており一目で分かる。2月初旬だが道標もしっかり確認できた。ここは南東側の斜面をトラバースして通過するのが正解だろう。我々は1ピッチ分フィックスを張って通過した。岩陰ということもあり膝上ほどの雪が積もっていた。

五百羅漢の東側をトラバース。

そこからは一時間ほどで男岳に到着した。山頂の鳥居はごく一部だけが顔を出していた。問題はここからの下りである。東方向に進路を変え尾根を下っていきコルに出たら北東方向に進み阿弥陀池を目指すという、言わば夏道に忠実に行くようなライン取りで進む作戦だった。ところがこの東側に下る尾根はひどいガス。視界数mという言い方で表現できないような、本当に一面真っ白の世界だった。目の前がフラットなのか段差になっているのかも判断しがたいような状況が続く。一瞬遠くに黒い尾根のような影が見え、「あ、あそこまでは行っても大丈夫」と判断しながら一歩ずつ慎重に歩みを進める形で、非常に神経をすり減らした。南側の雪庇を警戒して北側寄りに進んでいると後ろから「チダーー!」と叫び声が聞こえた。慌てて振り返る。まるで平昌オリンピック女子団体パシュートの高木美帆である(伝わらない)。どうやら尾根から外れて沢に下りそうになっていたらしい。助かった。自分でももちろんルートファインディングはしているが、それでも外れてしまうほどの視界不良だった。

ここどこよ?の図。(男岳から下った尾根の上にいます。

なんとかコルまで下りた。夏道では分岐になっているこのコルには道標があり、それも確認できた。ここからは北側に舵を取る。地図的にはなんでもなさそうな緩斜面であるが、現場では全くその斜面がどの程度なのか判別できなかった。先頭の千田をロープで確保し、まずは行かせてみてそのあと全員行けるか或いはロープを出していくかの判断をする事にした。結果は地図通りの緩斜面でありロープなしで全員行けたのだが、ここでも非常に気を遣った。阿弥陀池から北東に進むと男女岳に続く夏道(きわめて明瞭)にぶつかったので、ここで先頭を網野にバトンタッチした。男女岳山頂で記念撮影を済ませて下り始めるとあっという間に阿弥陀池小屋についた。ここでみんなどことなく緊張から解放されたような空気があったが、大橋から「最後まで緊張感をもって」というような一言があり、隊全体が改めて引き締まった。次のピッチは一年生にも経験を積ませようということで先頭松坂、2番手を網野にして行動開始した。横岳を目指すにあたりまずは横岳から北側に延びる尾根のコルに向かって歩いていた。10分ほど歩いた頃だっただろうか。突然だった。先頭の松坂が雪壁のようになっていた斜面を5mほど滑り落ちた。声をかけると返事は帰ってきた。周辺の安全を確認し、安が回り込んで松坂のもとに向かった。松坂が無事で一安心したのと同時に、こうしたアクシデントを起こしてしまったことを反省した。やはりどこかで気の緩みがあったのだろうか。ただ視界は相変わらず優れていなかったので、上級生が先頭を務めるべきだったことは間違いない。そこからは再び上級生に先頭を戻し横岳を目指した。強風に叩かれながらもいい経験を積むことができた。横岳以降はルートファインディングに苦労することもなく順調に進み、湯森山を過ぎたあとの1400m地点にて幕営した。この頃から自分は鼻の調子が悪化し始め、翌日には風邪を引いてしまったのだった。(千田記)

 

3日目 

天候:曇りのち晴れ

04:00 起床→06:10 発→06:35 熊見平→07:25 笊森山→09:20 乳頭山→09:45 田代平山荘→11:20 大釜温泉、下山

 目覚まし時計が鳴り、「くそぉもっと寝たいのに」と思いながらシュラフから這い出た。夜中は風が強かったが、朝になって幾分か落ち着いた。テントから頭を出すと、スカイラインが何とか判別できる程度に視界は回復し、空も雲が薄い箇所がチラッと見えた。天気良くなるんじゃね?と期待に胸を膨らませながら、朝飯を食って準備。出発早々、期待は裏切られた。確かに昨日よりは条件は良く、時折ガスの切れ間から空と地面の境目が判別できるのだが、基本は視界50m程度で真っ白。コンパス頼りに進んだ。特に笊森山から乳頭山までのコルに至るまでの箇所では最も視界が悪くなり、立っている場所の斜度と地形がわからないわ、空と地面の境目が判別できないわ、入って行きたくなるような間違い尾根がいくつか存在するわ、で恐ろしく難しかった。ゆ~っくり進んだ。後ろから修正することもあったが、考えていた通りのルートを概ねトレースできた。この時の先頭は網野。ナイスナビゲーションでした。

 ところが乳頭山を登りだすころには一転して青空が見え出し、今までのガスが嘘だったかのように消え去った。しまいには男女岳が見えるほど晴れ出す始末。さっきはあれ程僕らに苦労させたくせに、まったく人騒がせな天気だ。乳頭山は、北東に伸びる尾根に合流する箇所で短い急登を登って、小さな雪庇を乗り越える箇所があったが、天気が良くなったおかげで楽に山頂に至ることができた。あそこでも同じように視界がなかったら苦労しただろう。

さっきのガスが嘘のような晴れ。男女岳が見えた。

乳頭山山頂にて。(左から。前列:杉森、大橋。後列:松坂、小林、千田、網野、室田)

 晴れはその後も続き、ナビゲーションで大変な目に遭うことなくサクッと大釜温泉まで下山できた。下山後はもちろん大釜温泉に入り(秘湯って感じのいい温泉でした)、盛岡で冷麺と焼肉を食べて帰仙した。(安記)

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